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西梅田ビルディングプロジェクト 〜ランドマークを作るリノベーション〜

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■ 「隠す」のではなく「飾る」という発想 

 

ルーバーで外壁面を覆っただけで「リノベーションした」という物件をよく目に

します。

しかし、このような手法で本当にリノベートが為されていると言えるでしょうか?

旧い建物の再生には、周辺の新しいビルとの戦いに打ち勝つだけの競争力が要求

されます。

築年数の旧さは、スタート時点でマイナスのアドバンテージを負っていることに

他なりません。

前述したような、ルーバーを付けただけのリフォームでは「ただ見られたくない

汚い物を隠しただけ」であり、新しい価値を付加するという、本来の目的を達成

することは出来ません。

マイナス要素を打ち消し、競争力だけでなく市場から選択してもらえる商品力を

つけるためには、想像以上の価値をプラスしなければならないと言えるでしょう。

 

リノベーションを行う際、建築物を何らかの素材で「覆う」という手法は、必ず

選択肢としてあげられます。

外壁の改修面積が大きい場合や、タイルなどの既存仕様の除去費用が多額になる

場合などは、特にその傾向が強くなるといえるでしょう。

しかし、経年劣化し周辺のビルに比べて見劣りする建物を、安価な素材で覆った

ところで、その建築物の価値を上げることにはなりません。

高い質感やデザイン性があってこそ、見る人に感動を与える再生が出来るのでは

ないのでしょうか。



改修前ファサード.jpg


■ テーマは高級ブランドのフラッグシップショップ

 

外壁を覆う素材選定には様々な要因が影響を及ぼしました。

既存外壁の仕様、前面道路との境界線までの距離、建物の間口、窓等の開口部と

壁面のバランス、隣接する建物の仕様などです・・・

今回の計画建物の場合、デザイン上でまず問題となったのは間口の狭さでした。

建物正面のファサードは右側の3割ほどがエレベーターシャフト、左側の6割が

連装のサッシ、残り1割が壁や柱部分。

デザイン面の自由度は非常に低く、エレベーターシャフト部分と柱部分に何らか

の素材で覆い、サッシ部分については腰壁と垂壁を撤去し、開口面全面にガラス

を填め込むことで開放感をアップする程度しか、選択の幅がない無いように思わ

れました。

とはいえ、両隣のビルと比較して間口の狭い計画建物の存在感を際立たせるには

この改修内容では不満が残ります。

全面ガラスのカーテンウォールでは、両側のビルと同じ仕様であり埋没してしま

うことが容易に想像できたからです。

狭い間口を最大限に活かすプランニングが求められていました。



銀座ビル事例.jpg



■ 構成要素を減らし存在感を強調

 

そこで考えたコンセプトは、銀座などで見ることが出来る、狭小間口に建つ世界

のブランドショップの旗艦店でした。

東京の地価は高く、また銀座など歴史のある地区で大型敷地を新規に確保する事

は非常に困難といえるでしょう。

その為、世界規模で展開するような有名ブランドが驚くような狭小間口の敷地に

ビルを建築し、出店しているケースを目にします。

しかし、それらの建物は有名な建築家などが様々なアイデアを凝らすことにより、

狭小地のデメリットを魅力に転化することに成功しています。

 

上の写真は表参道にあるトッズと、銀座にあるエルメスの旗艦店です。

この2つの建物は、いずれも狭小間口の敷地に建設されています。

トッズのビルは柱と梁が水平垂直であるという通常の概念を覆し、構造体を写真

のようなランダムに配置することによって、開口部を間口の端から端まで配置し

間口の狭さを感じさせない独特の世界観を作り出すことに成功しています。

また、エルメスのビルは、外壁をガラスブロックにて構築することによって、窓、

柱、壁などの要素に限られた間口を分断させることなく、狭い間口にボリューム

を与えることに成功しています。

今回に計画建物については、前述したとおり狭い間口の中に窓や柱、壁といった

通常のビルのファサードに含まれる構成要素のほか、エレベーターシャフト部分

の壁など限られた範囲に多くの要素がひしめいていました。

そのため、仮に質感の高い素材を用いて改修を行ない、各々の要素に付加価値を

追加しようとしても、その効果は分断されてしまって、インパクトを出すことが

難しくなります。

これは、デザイン面において印象が薄くなってしまうことを意味します。

前述したビルのような存在感を打ち出すには、大胆かつ常識を覆す発想が必要と

されていました。



金属板アイデア1.jpg



■ 目の錯覚を用いて光を確保

 

そこで最初に考えたのは、窓や壁面といった一つ一つの構成要素の質感を上げて

いく方法ではなく、一つの素材で限られた間口の端から端まで覆い尽くすことで、

最大限のインパクトを得るというアプローチでした。

計画建物の周辺は両隣を含めてそのほとんどがガラスのカーテンウォ--ルで覆わ

れた建物ばかりでした。

そのような場所で、ガラスを用いた外壁のリノベーションを行ったとしても周囲

の風景と同化してしまい、まったく存在感を発信することが出来ません。

建物のプランニングを行う際に必ず意識することは、

 

「長いものをより長く、広いものはより広く、高いものはより高く」

 

ということです。

今回の建物の場合、開口部分と壁面部分という大きく分けると2つの構成要素が

あったのですが、各々を際立たせる努力をするのではなく、どちらか一つに徹底

して注力するという方法を選択しました。

つまり、開口部分も壁面も全て一つの素材で覆いつくし、一つのカタマリとして

見せることが、存在感を際立たせる最も効果的な方法だという結論に達しました。

しかし、そこで問題となったのは採光の問題でした。

建物全体を何かで覆う場合、窓の部分も例外ではありません。

しかし、採光が取れないようなビルではオフィスとして成立しません。

つまり、ガラスではないけれど、向こう側が透けて見える素材を使用しなければ

ならなくなったのです。

 

そこで真っ先に思いついたのが、金属のメッシュでした。

上の写真はアメリカのアイオワ州にある公立図書館です。

外壁面を金属メッシュで挟んだガラスで覆い、採光を確保すると共に、金属膜に

よる遮光効果でエネルギー効率の向上という効果も上げています。

ひとつの素材で覆いながら、採光も眺望もカタマリ感も確保するには、金属メッ

シュはうってつけの素材と言えました。

しかし、一方では問題点もありました。

ガラスでサンドしている為、表面はフラットにならざるを得ないため、表情が乏

しくなってしまうことや、重量や通風性の問題がそれです。

計画建物は竣工から数十年経っており、外壁についても出来るだけ負荷をかける

ことを避けねばなりませんでした。

そこで、金属をガラスで挟むのではなく金属板そのもので壁面を覆うという方法

を考えついたのです。



金属パネル説明.jpg



透過性については、金属メッシュの網状の構造の変わりにパンチング加工を施す

ことで、金属板の表面に微小な穴を開け向こう側が透けて見える視覚効果を出す

ことに成功しました。

これで採光や透過性の問題についてはクリアすることが出来ました。

また、このパンチングの工程によりパネルの開口率が上がり、重量の軽減などの

問題もクリアすることが出来ました。

更に、パンチング加工によってパネルの開口率があがり、通風性の確保や換気の

問題も解決することが出来たのです。

こうして様々な問題を克服し、狭小間口のビルを地域のランドマークとなるビル

へ再生することに成功したのです。